その症状、実は「GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)」かもしれません
「最近、下着に擦れるだけでヒリヒリする」「乾燥してかゆい」「普段使っている洗剤やボディソープが、急にしみるようになった」「デリケートゾーンが被れやすくなった」——そんな変化、ありませんか?
実はこれ、多くの女性が経験する「GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)」のサインかもしれません。GSMとは、更年期以降、女性ホルモン(エストロゲン)が減少することで、腟や外陰部、尿道まわりの粘膜が変化することで起こる症状の総称です。
エストロゲンには、腟内の潤いを保ったり、粘膜のハリやバリア機能を維持したりする働きがあります。また、腟内には「デーデルライン桿菌」という善玉菌がすんでいて、腟内を弱酸性に保ち、雑菌の繁殖を防いでくれています。ところが更年期になりエストロゲンが減少すると、このデーデルライン桿菌も減少し、腟内フローラのバランスが崩れやすくなります。その結果、粘膜が薄く敏感になり、今まで平気だった洗剤や下着の摩擦にも反応しやすくなる、と言われています。
「年齢のせいだから仕方ない」と諦めている方も多いのですが、GSMは適切なケアで症状を和らげられることも多い症状です。まずは「これはGSMかもしれない」と知ることが、ケアの第一歩になります。
こんな症状に心当たりありませんか(セルフチェック)
以下の項目、思い当たるものはありますか?
- デリケートゾーンが乾燥している感じがする
- 下着や衣類が擦れるとヒリヒリ・チクチクする
- 普段使っている石鹸やボディソープがしみるようになった
- 被れやすくなった、赤みが出やすくなった
- かゆみが続いている
- 性交時に痛みや違和感がある
- おりものの状態が以前と変わった気がする
いくつか当てはまった方も、「私だけ?」と不安にならなくて大丈夫です。これは更年期の女性の多くが経験する、とても自然な体の変化のひとつです。
実は「尿もれ」もGSMのサインかもしれません
「くしゃみをした瞬間に、ちょっと漏れた」「トイレが近くなった」「急に我慢できなくなることがある」——これも、実はGSMと関係していることがあります。
尿道や膀胱の粘膜も、腟と同じようにエストロゲンの影響を受けています。エストロゲンが減少すると、尿道まわりの粘膜や筋肉のハリが弱くなり、次のような症状が出やすくなると言われています。
- 咳・くしゃみ・ジャンプをしたとき、笑ったときにちょっと漏れる(腹圧性尿失禁)
- トイレの回数が増えた(頻尿)
- 急に強い尿意がきて、我慢しづらい(尿意切迫感)
- 尿路感染症(膀胱炎など)を繰り返しやすくなる
助産師として現場で多くの女性と接してきた中で感じるのは、特に経膣分娩を経験された方に、この尿もれの症状が多く見られるということです。出産時に骨盤底筋(膀胱や子宮、腟を支える筋肉)がダメージを受けやすく、そこに更年期のホルモン変化が重なることで、症状として出やすくなると考えられます。
「歳のせいだから」と一人で抱え込んでしまう方も多いのですが、乾燥やかゆみと同じで、これも体の自然な変化です。恥ずかしいことではありませんし、対策できることもたくさんあります。
なーさんの体験談
正直に言うと、私自身も「尿もれ」を実感した経験があります。
花粉症の季節、くしゃみが立て続けに出たときのことでした。「あれ、まさか…尿もれ?」と驚いたのが最初のきっかけです。
すぐに吸水ライナー(織物シート)をつけるようにしたのですが、思っていたより小さいサイズだと、パンティの中で寄れてしまうことに気づきました。少し長めのサイズを選ぶ方が、実際にはフィットしやすいというのも実感したポイントです。
日が経つにつれて、くしゃみのたびに気になるようになり、しかも膀胱に尿がたまっているときほど、漏れる量が増えることにも気づきました。
そこで、骨盤底筋を鍛えるトレーニングを始めることにしました。排尿の途中で尿を止める方法で、鍛えるべき筋肉の場所を意識するようにしていました。
※ただし、これを日常的なトレーニングとして繰り返すのは、膀胱への負担になることもあるため、あくまで「どこの筋肉を使うかを確認する」目的にとどめ、婦人科や専門家に相談しながら行うのがおすすめです。
あわせて、椅子に座るだけで骨盤底筋にアプローチできる「エムセラ」という機器による施術を、月1回、半年間続けました。また、腟内に機器を挿入するタイプの「インティマレーザー」という施術も、2回ほど受けてみました。
正直な感想をお伝えすると、こうした施術は1回だけでは効果を実感しにくいものでした。当時、エムセラは1回15,000円、インティマレーザーは部位によって1回15万円〜20万円ほどかかりました。ボーナスをすべて注ぎ込んだ記憶があります。それでも「誰にも内緒で、この症状を治したい」——それくらい切実な思いだったのです。
いろいろ試してみて最終的にたどり着いたのは、「結局は自分で骨盤底筋を鍛えるしかない」ということでした。特別な機器がなくても、日々コツコツ続けられるセルフケアこそが、一番続けやすくて大切なのかもしれません。
「恥ずかしくて誰にも言えない」その気持ち、よくわかります
先ほどの体験談でもお話ししたように、私自身、この症状については「誰にも内緒で」治したいと思っていました。パートナーにも、友人にも、なかなか言えない。そういう方、実はとても多いのではないでしょうか。
デリケートゾーンや尿もれの悩みは、体の不調の中でも特に「言いづらい」ものだと思います。「歳のせいと思われたくない」「恥ずかしい」「大げさに騒ぐことじゃない気がする」——そんな気持ちから、一人で抱え込んでしまう方をたくさん見てきました。
でも、これは決して恥ずかしいことではありません。エストロゲンの減少という、体の自然な変化によって起こる症状です。風邪をひいたら病院に行くのと同じように、婦人科や泌尿器科に相談していい症状なのです。
「まずは知ること」「一人で抱え込まないこと」——それだけでも、気持ちはずいぶん楽になります。次は、実際にどんなときに婦人科に相談した方がいいか、注意したいサインについてお話しします。
婦人科に相談した方がいいサイン・注意したい症状
セルフケアも大切ですが、中には「早めに婦人科を受診した方がいい」サインもあります。次のような症状があるときは、自己判断せず、早めに受診することをおすすめします。
- 急に強い痛みが出た
- 出血がある(月経以外の出血)
- おりものの色やにおいが明らかにいつもと違う
- 発熱を伴う
- 症状が急激に悪化した
- 水ぶくれのようなものができている
特に注意したいのが「帯状疱疹」です。帯状疱疹は、過去に水疱瘡(みずぼうそう)にかかったことがある方の体の中に潜んでいる「水痘帯状疱疹ウイルス」が、疲労や免疫力の低下をきっかけに再活性化することで起こります。そのため、基本的には「人から人へうつる」ものではありません。ただし、水疱の中の液にはウイルスが含まれているため、水疱瘡にかかったことがない方やワクチン未接種の方が直接触れると、水疱瘡としてうつることがあるので注意が必要です。
私自身の経験では、水泳教室に通われている方、季節の変わり目、お仕事が忙しい方に多く見られる印象があります。実際、患者さんの中には「水泳教室で流行っている」とおっしゃる方も何人かいらっしゃいました。これは人から人へ帯状疱疹がうつったというより、同じような疲労や気温差、紫外線などの環境要因が重なって、それぞれの体の中で眠っていたウイルスが同じ時期に再活性化した、と考える方が医学的には近いかもしれません。症状が重い方では、デリケートゾーンから肛門付近にまで水ぶくれが広がっているケースもありました。
ちなみに帯状疱疹は、発疹が出る前に「なんとなくピリピリする」という違和感だけが先に現れることも少なくありません。特に顔に出るタイプだと、原因がわからないまま脳神経外科や口腔外科、耳鼻科を転々としてしまい、結局内科にたどり着く、というケースもあります。発疹が現れるまでに2週間ほどかかるパターンもあるため、「痛みはあるのに何科に行けばいいかわからない」と戸惑う方も多いのです。
早めの受診はもちろん大切ですが、慌てて何件も病院をはしごすると、余計な検査費用がかさんでしまうこともあります。まずは落ち着いて、内科を受診してみることをおすすめします。
帯状疱疹と診断された場合、抗ウイルス薬が処方され、約1週間ほど内服するのが一般的です。ここで一つ注意点があります。抗ウイルス薬は腎臓に負担がかかることがあるため、もともと腎機能が低下している方は、必ず医師にその旨を伝えるようにしてください。自己判断せず、既往症やお薬手帳を持参して受診することをおすすめします。
「これくらいで受診していいのかな」と迷う方も多いのですが、迷ったら受診する、で大丈夫です。専門家に相談することは、決して大げさなことではありません。
今日からできるセルフケア
婦人科の受診を考えるほどではないけれど、日々の生活の中で意識できることもたくさんあります。今日からできることを、いくつかご紹介します。
尿もれケアは「パッドかぶれ」にも要注意
尿もれ対策にパッドを使う方は多いと思いますが、実はそのパッド自体が原因で被れてしまうことがあります。さらに、尿にはアンモニアが含まれているため、そのまま放置するとヒリヒリとした刺激の原因にもなります。使い捨てタイプが合わない方は、布ライナー・布ナプキンタイプを試してみるのも一つの方法です。
洗浄方法を見直す
洗いすぎ・刺激の強い洗浄料は、かえって症状を悪化させることがあります。個人的には、ビデの使用はあまりおすすめしていません。ぬるめのお湯で優しく洗い流し、洗浄料を使う場合はベビー用の低刺激なものがおすすめです。価格は少し高めですが、デリケートな皮膚にはそれだけの価値があると感じています。
塗り薬は「何が入っているか」を意識する
病院を受診すると、ステロイド入りの塗り薬を処方されることがあります。ステロイドは炎症を抑える効果がある一方、長期間続けて使うと皮膚が薄くなってしまうことがあるため、症状が本当につらいときだけ、医師の指示のもとで使うようにしましょう。
もし選べるようであれば、「アズノール軟膏」も候補の一つです。赤ちゃんのおむつかぶれにも使われるやさしい塗り薬で、炎症やかゆみを抑え、肌を保護するような使用感があります。ただし、症状や体質によって合う・合わないがありますので、あくまで参考としてとらえていただき、実際の使用は医師や薬剤師に相談してください。
下着は通気性重視で
締め付けの強い下着や、蒸れやすい素材は、かゆみや炎症の原因になることがあります。綿素材など、通気性の良いものを選びましょう。
骨盤底筋トレーニングを日常に
尿もれが気になる方は、骨盤底筋を意識して締める・緩めるトレーニング(ケーゲル体操)を、日常生活の中に取り入れてみてください。排尿中に止めて確認するのはあくまで筋肉の場所を確かめるときだけにして、トレーニングそのものは排尿と関係ないタイミングで行うのがポイントです。
十分な睡眠と休養
疲労や免疫力の低下は、帯状疱疹をはじめ、さまざまな体調不良のきっかけになります。「疲れたら休む」を、罪悪感なく実践してみてください。
ケアアイテムの選び方
症状が落ち着いてきたら、日々のメンテナンスケアも大切です。ここでは、私自身が試してよかったものや、婦人科での治療の選択肢についてご紹介します。
婦人科で相談できる選択肢
症状がつらいときは、婦人科で相談すると、腟に挿入するタイプのホルモン製剤(腟錠)を処方してもらえることがあります。私自身も婦人科で処方してもらい、使ってみたことがあります。使ってみて、少し潤いが出てきたように感じました。ただし、これは医師の処方が必要なお薬なので、気になる方はまず婦人科に相談してみてください。
保湿オイル(fuwari)
摩擦による痛みやヒリつきが気になる方には、オイルタイプの保湿ケアもおすすめです。私が使っているのは「fuwari」というCBD配合のオイルで、肌をなめらかにすることで摩擦を軽減し、ヒリつきの緩和につながる感覚がありました。オイルなので、尿による刺激からも肌を守ってくれるような使用感があります。使い続けるうちに、肌にハリが出てきたように感じたのも個人的な実感です。
市販の保湿ケアアイテム(iroha FIT・フェムゲル/ViLabo)
婦人科や更年期外来では、本格的な治療として医薬品が処方されることもありますが、日常的なケアとして続けやすいアイテムが欲しいときには、市販の保湿ケアアイテムがおすすめです。
「iroha FIT」は、婦人科医も推薦しているデリケートゾーン用の保湿ケアアイテムで、しっかりケアしたい方向けです。「フェムゲル/ViLabo」は、より手に取りやすい価格帯で、毎日のケアに取り入れやすいのが特徴です。
女性らしさや、年齢に負けない自分でいたいという気持ちに、うるおいのある日々のケアはきっと寄り添ってくれます。まずは価格帯や続けやすさで選んでみて、自分に合うものを見つけていただければと思います。
なお、パートナーとの触れ合いや親密な時間を大切にすることも、心と体のケアの一つと言われています。オルガズムの際にはオキシトシンなど、幸福感に関わるホルモンが分泌されることが知られているので、無理のない範囲で、そうした時間も大切にしてみてください。
また、独身の方や、パートナーの理解が得にくいという方でも、自分のタイミングで一人で取り組めるセルフケアの方法もあります。誰かに合わせる必要はなく、自分の心と体に向き合う時間として、そうした選択肢も肯定的に捉えていただけたらと思います。女性自身の手で、自分の心と体を整えていく——それも立派なセルフケアの一つだと、私は感じています。
まとめ
デリケートゾーンの乾燥やかゆみ、尿もれ——どれも「歳のせい」「恥ずかしいこと」と、一人で抱え込んでしまいがちな症状です。でも実際には、更年期に多くの女性が経験する、ごく自然な体の変化です。
まずは「これはGSMかもしれない」と知ること。そして、日々のセルフケアを少しずつ取り入れながら、つらいときは一人で我慢せず、婦人科や専門家に相談すること。それだけで、心も体もずいぶん楽になります。
私自身、高額な施術にお金を注ぎ込んだ経験も、恥ずかしくて誰にも言えなかった経験もあります。だからこそ、同じように悩む方に伝えたいのは、「そんなに頑張りすぎなくていい」ということです。
婦人科、更年期外来、美容外科、そして——なーさんに。話すだけでも、気持ちがすーっと軽くなることがあります。小さな疑問も、放っておけばちりも積もって、大きな不安になってしまいます。そしていつしか、「今さら聞けない」「恥ずかしい」に変わってしまうのです。
どうか、ホルモンの扉を、私に開いてみませんか。

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