なぜ更年期の今、帯状疱疹の話をするのか
帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、子どもの頃にかかった水疱瘡(水痘)のウイルスが、体の中に潜んだまま何十年も過ごしたあと、免疫力が落ちたタイミングで再び暴れ出す病気です。
更年期はまさに、エストロゲンの低下によって免疫の働きが揺らぎやすい時期。加えて、仕事が忙しい、季節の変わり目、ストレス、寝不足——こうした条件が重なると、一気にリスクが上がります。実際にデータを見ても、発症は7月から10月にかけて増える傾向が報告されており、ちょうど今の時期は特に気をつけたいタイミングです。
女性に多く見られる病気でもあるので、「なんだか体がピリピリする」「最近疲れているな」と感じている更年期世代の方にこそ、知っておいてほしい内容です。
症状は人によって全然違う——「水疱が出ない」タイプが実はやっかい
帯状疱疹というと「体に赤い発疹と水ぶくれが帯状に出る病気」というイメージが強いと思います。ただ、実際に見てきた印象では、症状の出方は人によってかなり差があります。
はっきり水疱ができる方もいれば、水疱はほとんど目立たず、ピリピリ・チクチクとした痛みだけが強く出て、「服が触れるのもつらい」というくらい皮膚が過敏になる方もいます。
実は、発疹がほとんど出ないまま神経痛だけが先行するケースは「無疱疹性帯状疱疹(むほうしんせいたいじょうほうしん)」と呼ばれ、医学的にもきちんと認められています。見た目に手がかりがない分、診断がとても難しく、心臓の病気や単なる神経痛と間違われてしまうこともあるようです。だからこそ、「見た目に発疹がないから大丈夫」とは言い切れないのが、この病気の厄介なところです。
一番つらいのは「頭」と「陰部」——この2箇所は特に注意
これまで見てきた中で、特につらそうにされているのが「頭」と「陰部」に出るケースです。この2つは、他の部位とは少し違う注意が必要だと感じています。
頭・顔に出るタイプ
頭の片側だけにピリピリした痛みが出たときは、少し注意してください。顔まわりには、感覚を司る「三叉神経」と、表情を動かす「顔面神経」という、性質の違う2つの神経が通っています。
三叉神経のうち額側の枝がやられると、目にまで影響が及ぶ「眼部帯状疱疹」になることがあります。鼻の頭に発疹が出ると、目の合併症(結膜炎や角膜炎など)のリスクが高いサインとされているので、この場合は眼科との連携も必要になります。
一方、顔面神経がやられると「ハント症候群(耳性帯状疱疹)」と呼ばれる状態になり、耳の痛みや水疱、顔面の麻痺、難聴やめまいが出ることがあります。こちらは耳鼻科が中心の診断領域です。
この結果、耳の症状ならまず耳鼻科、強い頭痛だと脳の病気を疑って脳外科、あご側の神経がやられると歯の痛みと勘違いして歯科・口腔外科へ——というように、発疹が出るまで診断がつかず、いくつもの科を転々としてしまう方を、実際に何人も見かけてきました。最終的に発疹が出て、ようやく「帯状疱疹だったんですね」と診断がつく、という流れです。
陰部に出るタイプ
陰部の帯状疱疹は、範囲が肛門側まで広がることもあります。そうなると、排便のたびに痛みが走り、強く拭くこともできず、トイレの時間そのものがつらいものになってしまいます。この部位ならではのつらさは、案外知られていないのではないかと感じています。
なーさんの体験——スーパーライザー照射という選択肢
帯状疱疹の痛みというと「冷やして我慢する」イメージを持つ方もいるかもしれませんが、これは逆効果です。冷やすことで血行が悪くなり、かえって痛みが強く出てしまうことがあります。
現場で見てきた中でおすすめしたいのが、内科などで受けられる「スーパーライザー」という近赤外線の照射治療です。光を当てて温めることで痛みをやわらげる治療で、痛くもかゆくもありません。光を当てる場所は、帯状疱疹が出ている場所によって変わります。顔や頭、首、腕に出たときは首まわりの「星状神経節」に、陰部に出たときは陰部に直接当てることもあります(照射口を清潔なラップで覆い、少し離して当てます)。週に3回ほど通い、1回15分程度の照射を1か月続けると、跡がほとんど残らずきれいに治っていく方が多い、というのが私自身の実感です。この治療法自体は、帯状疱疹後神経痛の緩和にも使われている、実在する治療法です。最初の処置がとても大切なので、どんな治療がよいかは医療機関と相談してくださいね。
ただし、知らずに湿布や冷却シートで冷やしてしまっている方が多いのも事実です。「温める方がいい」という情報自体、案外知られていないので、ぜひ覚えておいてほしいポイントです。
一度なったら終わり、ではない——再発すること、腎機能への配慮
帯状疱疹は、水疱瘡のウイルスによる病気なので、一度かかったら二度とならない、というわけではありません。ストレスや加齢、病気などで免疫が落ちるたびに、再び出てくることがあります。何度も繰り返す方がいるのは、免疫の状態がその都度変化するためです。
治療で使う抗ウイルス薬についても、一つ知っておいてほしいことがあります。以前から使われているアシクロビルやバラシクロビルは、腎臓から排出される割合が高い薬のため、腎機能に不安がある方は医師にその旨を伝える必要がありました。一方、比較的新しい薬であるアメナメビル(アメナリーフ)は腎臓からの排出がごくわずかで、腎機能による調整がほとんど不要とされています。どの薬が処方されるかは症状や体の状態によって医師が判断することなので、「今はこういう選択肢もある」という情報として知っておいていただければと思います。
50歳を過ぎたら考えたい、帯状疱疹ワクチン
ここからは、なーさんとして特にお伝えしたいことです。帯状疱疹は、なってから治すよりも、なる前に備える選択肢があります。それがワクチンです。
ワクチンには2種類あります。
「2025年度から、帯状疱疹ワクチンは予防接種法上の『定期接種』に位置づけられました。ただし対象になるのは65歳になる年度の方(経過措置として70・75・80・85・90・95・100歳になる方も対象)というように、年齢で区切られた『その年度だけ』の話。インフルエンザワクチンのように毎年打てるものではないので、実質的には対象の年に当たったときの一回だけの助成、と考えておくのが実情に近いです。助成の金額や仕組みも自治体によって差があります。」
「生ワクチンは1回の接種で済み、費用は全額だと8,000円程度(自治体の助成があればおおよそ半額程度に)。効果は接種後1年で6割程度、5年ほどで4割程度まで下がっていきます。妊娠中の方や、免疫を抑える治療を受けている方は接種できません。」
「シングリックス(組み換えワクチン)は一回の接種後2か月あけて、半年以内に2回接種するタイプで、全額だと42,000円程度。接種後1年で9割以上、5年たっても9割程度、10年経っても7割程度の予防効果が続くと報告されています。ただし注射した部分の痛みや発熱、筋肉痛といった副反応は、生ワクチンより出やすい傾向があります。金額の負担は大きいけれど、効果は長く持続する——費用と持続期間、どちらを取るかは、選ぶのはあなたです。」
ワクチンの効果自体は50歳以上から報告されているので、私自身は「50歳を過ぎたら、一度検討してみてほしい」という立場です。ただし、公的な助成の対象年齢は自治体ごとに異なりますので、実際に受ける際は、お住まいの市区町村のホームページで助成内容を確認してみてください。
まとめ
帯状疱疹は、更年期で免疫が揺らぎやすい今だからこそ、知っておいてほしい病気です。水疱が出ないタイプもあること、頭や陰部に出ると特につらく、診断まで時間がかかりやすいこと、冷やすのではなく温めるケアが合っていること、そして何度でも再発しうること——どれも、実際に見てきたからこそお伝えできる内容です。
そのうえで、一番お伝えしたいのは「なる前に備える」という選択肢があるということ。50歳を過ぎたら、帯状疱疹ワクチンを一度検討してみてください。
体のピリピリ、我慢していませんか。小さな違和感も、放っておけばつらさが積み重なってしまいます。
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